お盆に青春18きっぷで京都、丹後、山陰の旅をしたとき、2日目の夜に山陰本線で豪雨の為、3時間ほど山の中で足止めをくらいました。そのときに僕と同じ米子に宿泊する予定の2人の18キッパーの方と仲良くなりました。

しかも僕ら3人とも、翌日の予定まで一緒で、みんな一畑電車に乗って出雲大社に行くという部分まで被ってました。話をしているうちに2人ともある映画の聖地巡礼の目的もあって一畑電車に乗りに来たとのこと。その映画とは「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」。お二人とも映画の話で盛り上がってました。

映画を観ていない僕は一人置いてけぼりでしたが、映画のタイトルくらいは知ってました。ただその舞台が一畑電車というのは初耳でした。話を聞いてると、とても良い映画だったようで、僕も帰ってから観てみようと思ったのでした。

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そういう経緯で、先週末に、「PlayStationRStore」で「RAILWAYS」レンタルして観てみました。いやー、すごく良かったです。感動しました。なんでいままで観てなかったんだろうって思えるくらい。


この映画はタイトルどおり49歳でエリートサラリーマンから田舎の私鉄の運転士になった男性を主人公とした物語です。

主人公は東京の大企業に勤め、出世頭でバリバリ仕事をしている出世頭のサラリーマン。映画冒頭では、上司からある工場の閉鎖をまかされ、これを無事こなせば取締役だと言われてました。この主人公、典型的な仕事人間で、リストラなども会社の為当然だという感じで冷淡にこなしてました。しかし仕事第一の男というものは家庭を顧みないもので嫁と娘のいる彼の場合もそうでした。

しかし、そんな中、故郷である島根に住んでいる母が電車の中で倒れてしまいます。急所、島根に向かい母の看病をしていると今度は仲の良かった同僚が交通事故で亡くなったという知らせが届きます。その同期は閉鎖する工場の工場長をやっていて、工場が閉鎖しても本社に引き抜いてやるという主人公の申し出を「夢を実現させたい」と断っていたのでした。

母の病気と同僚の死から自分の人生を顧みているうちに子供の頃、電車の運転士になりたかったという夢を思い出します。「好きなことをやりなさい」という母と、夢を叶えられずに死んだ同僚。今まで自分の夢を追うことに挑戦しなかったことに気が付き、夢を追ってみようと決心する主人公。

給料も待遇も良い今の会社を辞め、一畑電車の運転士になるという夢に賭けてみることにしたのでした。そんな感じのストーリーです。




出世が約束されたエリートラサリーマンの道を捨てて、地方の零細私鉄の運転士になるっていうのは相当の覚悟がいると思います。まして、49歳という年齢を考えると、なかなかできるものではありません。

また鉄道の運転士という仕事は楽な仕事ではないです。バスの運転士の経験がある僕なのですが、ある意味人の命を預かる仕事なので、プレッシャーやストレスはかなりのものです。覚えることも多いし、体力もいります。厳しい仕事でもあるのです。まあ、あれだけ出世する力のある主人公ですから、乗り切れたという部分はあったんでしょうけどね。

研修のシーンは僕もバス運転士の研修してた頃を思い出させました。運行前点検の試験とか、僕もやったなあ。バスですら100項目以上の点検をやらなくてはいけなかったです。電車だともっと多いのでしょうね。とにかく一人前の運転士になるには長い時間と勉強、訓練が必要なのですよ。

ただ、今は映画で描かれていたように運転士不足というのもあって、けっこう募集の上限は緩いです。僕が勤めていたバス会社も60歳まで募集してました。僕の同期にも40代の方が何人かいましたし。まあバスと電車じゃ若干事情は違うかもしれませんけどね。


仕事と夢。僕のような人間には永遠のテーマに思えます。僕もいろいろな機会に考えてしまうテーマですよ。しかし歳を重ねる毎に夢を追うことは難しくなり、自分のやりたいことより安定した仕事があることを重要視するようになってしまいます。

僕は主人公のように給料も待遇も良いエリートサラリーマンでは無いですけど、それでも安定した仕事を捨てて、何かに挑戦しようという気概は持てません。主人公より10歳も歳下な僕でさえそう思うのですから、49歳でエリート職を捨ててまでというのは考えられません。しかし主人公の決断に憧れやうらやましさを覚える部分もあります。

あと、主人公が同期の若い運転士と語るシーンは心に響きました。夢を追って運転士になった49歳と野球選手の夢を挫折して仕方なく運転士になった若者。まさに自分の中の生活の為我慢してやる気なく働く自分と、自分のやりたい仕事を楽しくやって生きてみたい自分との葛藤を思い出させました。そういう意味でも心揺さぶられる映画だったと思います。


そしてなんと言っても、舞台である一畑電車に先月乗ってきたばかりというのがインパクトを大きくしたと思います。出雲市駅、出雲大社前駅、出雲大社、松江、宍道湖、一畑電車の各車両などなど、行ってきたばかりの場所が背景になってるのは興奮しました。


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特にスイッチバックのある「一畑口駅」でのシーンはニヤリとさせられました。運転士である主人公が列車を降りてホームを歩いてる時に列車から出てきた嫁さんと遭遇。話をした後、車掌と入れ替わるように反対側の運転席へ。これこの駅がスイッチバック駅だと知らないと、運転士と車掌が入れ替わったんだなって勘違いしそうですよねw


しかし、映画を知らない時に行った旅だったので、見落としている巡礼地もたくさんあった訳で、是非とも近いうちにリベンジしたいと思います。

特に主人公の実家がある「いのなだ駅」。一畑電車に乗ったときに、松江しんじ湖温泉駅で前日にお会いした18キッパーの方と再会したのですが、彼が降りた駅がこの駅でした。降りるときに「映画に何度も登場する駅で主人公の家の最寄り駅なんです」と説明して頂いたのを覚えてます。…今思えば写真くらい撮っておくべきでした。


それと、この映画の大きな魅力としては映像美も大変大きな要素だと思います。

エンドロールの列車が田園風景の中を走るシーンは泣きたくなるほど美しいと感じました。映画の一番最初の都会の駅(東京の大崎駅とのこと)との対比が面白かったです。

そのほか宍道湖湖畔を走る列車のシーンや、緑豊かな田園風景、雪が降る中を列車が走るシーンなど、宍道湖周辺の景色の美しさをよく撮ってたと思います。この映画を観てから旅行に行っていたら、一畑電車の沿線の景色をもっと楽しめていたのではないかなと思いました。


そんな訳で「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」、個人的にはとても印象に残る映画でした。僕が大好きな映画の一つとして殿堂入り決定ですよ。

ひょんな機会から観た映画ですが、観ることができて大変幸運だったと思います。できれば映画館のスクリーンで観たかったですけどね。

お恥ずかしながら僕自身は今回の旅行を計画するまで一畑電車の存在すら知らなかったのですよ。それが映画を観るまで至ってなにかの縁のようなものを感じずにはおれません。


この映画、一つは仕事と夢の間で揺れている僕自身が作品のテーマに共感したこと。一つは電車運転士という仕事が自分のバス運転士だった頃を思い出させる部分。一つは鉄道ファン、旅行ファンとしての関心。一つが宍道湖周辺の田園風景や鉄道が走る姿の映像美。そしてもう一つが先月行ったばかりの場所が舞台としてたくさん登場してた。これらが僕のこの作品に対する評価を高めた要素だったのではないかと思います。

でもこんな僕以外でもきっと楽しめる映画だと思うので観る機会があれば是非観てもらいたいです。


なんか最近は映画といえば邦画ばかりになってますねホント。正直今まで映画といえば洋画で、邦画は馬鹿にしていたところがあったので良作をたくさん見逃しているような気がします。今回みたいに良い映画の評判を聞いたら積極的に観ていこうかな?と思いました。


あと、今回初めて「PlayStationRStore」で映画をレンタルしてPS3で観たのですが、普通にレンタルするより楽で良いですね。ただ価格が500円(高画質タイプ)だったので一般のレンタルよりかなり割高ですが、返しにいく手間がめんどくさい僕にとっては楽でよかったです。

まあ、ダウンロードに時間がかかったり、ラストのシーンで省エネ機能(一定時間操作が無いと自動で電源オフする機能)が働きそうになり視聴が一時ストップするというアクシデントもありましたが…。これ、映画観る前に設定しておいたほうが良いですよ…とほー。

レンタル期間は購入から30日以内に再生して、その初回再生から3日間になっております。作品数は若干少ないものの、けっこう便利なサービスだと思いました。



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